その仕事は、あなたが本当に残したいものですか
- ishida-yamamoto akemi
- 2 時間前
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― 人生は一度きり。効率よりも、心が動くことを選ぶ

「成果を増やすには、どの方法が最も効率的か」
限られた時間の中で仕事をする私たちにとって、効率を考えることは大切です。
けれども、効率よく積み上がった成果が、自分の心をまったく動かさないとしたら、それを長く続けることはできるでしょうか。
このことを考えるきっかけになったのは、最近、私の動画チャンネル収録のためにインタビューさせていただいた京都大学皮膚科教授の椛島健治先生が話していたことです。
内容はこちらから動画でご覧いただけます。
今や、医学研究の手法は大きく発展し、流行りの空間トランスクリプトーム解析やシングルセル解析など、大量のデータを扱う技術を使えば、そこから見える現象を論文にまとめ、研究成果を積み上げることができます。
しかし、椛島先生は、成果を出しやすいからという理由だけでは面白いと思えない、と話されました。
日頃の診療の中で生まれた疑問を出発点に、自分が知りたいことを追いかける。
英語でいえば curiosity-driven、好奇心から始まる研究でなければ、やる気が湧かないというのです。
私は、その言葉に深く共感しました。
道具が問題なのではなく、そこに自分の問いがあるか
もちろん、データ駆動型の研究や新しい解析技術を否定したいのではありません。それらは、これまで見えなかった現象を明らかにする強力な道具です。その方法に心が躍り、大量のデータから未知のパターンを見つけることを楽しめる人もいます。
大切なのは、流行しているから、論文が出やすいから、上のポジションに近づけそうだからという理由だけで、自分の時間を渡していないかということです。
昇進や社会的評価を目標にすることも悪くありません。ただ、それだけが動機なら、希望する立場を得た瞬間に、次へ進む力を失うリスクがあります。
一方、自分の問いから始まった仕事は、効率が悪く見える時期があっても、何度でもそこへ戻りたくなります。うまくいかないときにも、別の方法を試したくなる。その繰り返しが、長い時間をかけて、他の人には簡単にまねのできない仕事を育てるのだと思います。
上野ファームで見た、『好き』が育つ時間
この夏、私は北海道旭川市の上野ファームを訪れました。花々が風に揺れる庭を歩きながら、ここにも、心が動くことを長く続けた先に生まれた仕事があると感じました。
上野ファームは、もともと代々続く米農家です。1983年に米の個人販売を始め、農場を訪れるお客様に、目で見ても魅力ある場所だと感じてもらいたい。
その思いから、田んぼの畦道にルピナスを植えたことが、庭づくりのきっかけになったと公式サイトに記されていますし、私も実際に上野由紀さんの講演で当時の話をお聞きすることができました。
ここのガーデナーの上野砂由紀さんは、ご両親が農場の周りを花で美しくしようとする姿を見て育ち、イギリスでガーデニングを学びました。帰国後、ご両親と庭づくりを始めます。
家族で少しずつ庭を広げ、公開すると、市内だけでなく北海道外からも人が訪れるようになりました。苗の販売が始まり、古い納屋はカフェへと生まれ変わりました。
興味深いのは、イングリッシュガーデンをそのまま再現するのではなく、北海道の気候や風土に向き合う中で、上野ファームならではの『北海道ガーデン』が育っていったことです。
好きなことを続けるとは、誰かの成功をなぞることではありません。自分がいる場所、自分が持っている材料、人との出会いを受け取りながら、自分にしかつくれないものへ育てていくことなのだと思います。
最初から大きな事業をつくろうとしたのではなく、人を喜ばせたいという思いから花を植え、庭づくりを続けた。その『好き』が、結果として多くの人に受け入れられる場所と仕事に育った。私は上野ファームを歩きながら、そのように受け取りました。
私がいま、心を動かされていること
では、私自身は何に心が動くのだろう。そう考えると、いまは、限られた材料から何かをつくることに喜びを感じています。特に動画編集は、とても楽しい仕事です。
どの場面を残し、どの順番で伝え、どんなイラストやBGM・効果音を添えるか。素材が同じでも、組み合わせによって伝わり方は変わります。考えているうちに時間を忘れることがあります。
成果のために我慢して続けているのではなく、つい続けてしまう。それは、自分の内側から湧く動機を教えてくれる大切なサインです。
依頼を受けることと、自分の時間を守ること
医師には、製薬会社などから講演を依頼される機会があります。知識を社会に還元する意味のある仕事も多く、依頼されること自体を否定する必要はありません。
ただ、条件のよい外部からの依頼の仕事で予定が埋まり、自分が本当に育てたい問いや活動のための時間がなくなるなら、一度立ち止まる必要があると考えます。
外から与えられた仕事は、依頼が途切れれば終わります。
一方、自分の好奇心から育てた仕事、身につけた技術、人との信頼関係は、自分の中に残ります。
人生は一度きりです。すべてを効率で選ぶのではなく、自分の時間を何に渡すのかを、自分で決めたいものです。
心が動くことを選ぶ三つの問い
1. 他人からの評価とは関係なく、つい考えてしまうことは何ですか。
2. 面倒や失敗があっても、また取り組みたくなることは何ですか。
3. そのための時間をつくるとしたら、何を一つ減らしますか。
答えが、すぐに立派な仕事や事業になる必要はありません。
小さな疑問でも、庭の一輪の花でも、一本の短い動画でもよいのです。
心が動く方向へ時間を重ねると、その積み重ねが、やがて誰かを喜ばせ、自分にしか残せない仕事になると私は考えます。
今日の問い
その仕事は、あなたが本当に残したいものですか。
人生は一度きりです。
今週、心が動くことのために、どんな小さな時間をつくりますか。
臨床40年、教授10年の経験とコーチングの視点から、忙しい医療者が自分の軸や強みを見つめ直し、より良いキャリアを選ぶためのメッセージを週3回お届けしています。



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