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忙しい医療者の時間術~一つの行動から五つの価値を生み出す方法

10 分前
読了時間: 6分

一つの行動にいくつもの意味を重ねる


一つの行動にいくつもの意味を重ねる
一つの行動にいくつもの意味を重ねる

一日は、誰にとっても24時間。

やりたいことが増えるほど、『もっと時間があれば』と思います。

けれども、時計の針を増やすことはできません。

その一方で、一つの時間から受け取る価値を増やすことはできます。

何かを同時に詰め込むという意味ではありません。

相性のよい活動を重ねたり、人に任せたり、予定外の時間を別の視点から捉え直したり、過去に身につけたものを誰かへ渡したりする方法です。

最近の出来事を振り返ると、私は時間を『足し算』だけで考えなくなっていました。


一度のキノコ採りから五つの価値を受け取る

北海道は秋になりました。私は最近、家の周りで落葉キノコを採っています。

キノコが生えている場所は斜面なので、歩くだけでもかなりの運動になります。

野外では熊よけの鈴をつけ、スマートフォンのスピーカーから英語のオーディオブックを流しています。

斜面を歩く運動になり、英語を聞く時間にもなります。

自然の中で過ごすので気分転換にもなります。

採れたキノコを食べる楽しみがあり、離れて暮らす父へ送れば、とても喜んでもらえます。

キノコを採っていた一時間が、運動、英語学習、リフレッシュ、食の楽しみ、親孝行という複数の時間になっていました。

(もちろん、野外では安全が最優先です。ヒグマの出没情報を確認し、薄暗い時間を避け、周囲へ人の存在を知らせながら行動する必要があります。野生キノコも、食用と確実に判断できるものだけを採り、食べたり人へ送ったりすることが大前提です。)



相性のよい活動を重ねる

ここで大切なのは、注意力が必要なことを無理に同時進行させることではありません。

診療をしながら別の仕事をしたり、運転中に画面を見たりすれば、安全と質が損なわれます。

一方、歩きながら耳で学ぶ、移動中に考えを音声で記録する、単純作業をしながら好きな音楽を聴くなど、使う感覚や注意の向きがぶつかりにくい組み合わせもあります。

『同時にできるか』だけでなく、『安全で、どちらの価値も落ちないか』を確かめることが必要です。



誰かに任せることで時間を並行させる

スティーブ・チャンドラーの『100 Ways to Motivate Yourself』には、著者が子どもたちとスーパーマーケットへ行ったときの話が出てきます。

子どもたちは買い物リストを持ち、店内で必要な品物を探します。

著者は隣接するデリの席で、子どもたちを見守りながら娘のレポートに目を通します。

子どもたちは時々戻ってきて、買い物の進み具合を伝えます。

すべてを自分一人で順番に行えば、買い物のあとに宿題を見ることになります。年齢に合った役割を子どもへ任せ、互いに見える場所で進めたことで、買い物と学習支援の時間を並行させることができました。

人に任せることは、自分の負担を減らすためだけではありません。

相手が考え、選び、経験する時間をつくることにもなります。


部下に何かの権限を委譲することで、自分はその時間に別のタスクを実行できます。

私も今、多くのタスクをAIに依頼し、私の役割は出来上がった成果物の内容をチェックすることが主体になりつつあります。



無駄に思えた三千歩を捉え直す

ある日、若手の女性医師が、会議に使うパソコンの部品を取りに、離れた医局の部屋まで戻りました。

ところが該当の部品がみあたらず電話で確認すると、その部品は秘書の方がすでに会議室へ届けてくれている途中と分かりました。

往復でおよそ三千歩。女性医師は、『無駄足でした』と悲しそうでした。

私は、『その分、運動にはなりましたね』と声をかけました。

すると、その方は『そうですね』とパット明るい表情になりました。


必要のない往復だったことは変わりません。

落胆を無理に打ち消す必要もありません。

それでも、歩いた三千歩まで消えるわけではありません。


予定外の時間に何が残ったかを探すと、失望から少し早く立ち直れることがあります。

意味の捉え直しは、失敗を成功と言い換えることではありません。起きた事実を認めたうえで、そこから回収できる価値を見つけることです。



過去に使った時間を誰かへ手渡す

私はこれまで、試行錯誤しながら動画編集の技術を覚えてきました。

一本の動画を作るために、撮影、音声、画像、字幕、場面転換などを一つずつ学びました。

思うようにできず、何度もやり直した時間もあります。


まもなく、仲間へ動画編集の方法を教えるオンラインの会を開催します。

編集画面を共有し、自分で撮影した動画やPowerPoint資料を組み合わせる方法を、初心者の方にも分かるように説明する予定です。

その準備をしていて、自分のために使った過去の時間が、誰かの学習時間を短くするために役立つことに気づきました。

私の試行錯誤を順序立てて伝えれば、仲間は同じところで長く迷わずに済むかもしれません。


過去に使った時間は、終わった時間ではありません。

知識や技術として残っていれば、別の場面で使い直し、誰かへ渡すことができます。

そこまで含めると、一度使った時間の価値は未来にも広がります。



時間の価値を増やす四つの方法

重ねる 安全で相性のよい活動を組み合わせ、一つの時間から複数の価値を受け取る。

任せる 年齢や経験に合った役割を分け、それぞれの時間を並行させる。

捉え直す 予定外の出来事を否定せず、そこに残った価値を探す。

手渡す 過去に身につけた知識や技術を、誰かが使える形にして伝える。


ただし、すべての時間を役立てようとしなくてもよいと思います。

休息、ぼんやりする時間、自然を眺める時間は、それ自体に価値があります。

効率を高めようとして、心身を休ませる時間まで削ってしまえば本末転倒です。


時間の価値を増やすとは、予定を隙間なく埋めることではありません。

自分にとって大切なものを一つの行動の中に見つけ、その価値を丁寧に受け取ることです。



時間の価値を見直す三つの問い

1.  あなたが今していることに、もう一つ価値を重ねるとしたら何ですか。

2.  過去に使った時間や身につけた技術から、まだ引き出せる価値は何ですか。

3.  次に使う一時間で、二つ以上の大切なことをかなえるには、どんな工夫ができますか。


今日の予定を増やさなくても構いません。

すでに行っていること、終わったと思っている経験、これから使う一時間を見直すだけで、時間の見え方は変わります。

あなたは今日の一時間から、どのような価値を受け取りたいですか。


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