一人では見えない強み|一緒に取り組むと 自分の役割が見えてくる

一人で進める自由と落とし穴
一人で仕事を進めるのは気楽です。自分のペースででき、計画の途中変更もいつでもできます。深く集中したい仕事では、それが大きな強みになります。
しかし自由である分、「今日はやらなくてもよいか」と予定を先送りし、現状維持バイアスに引かれやすくもなります。誰にも迷惑をかけない計画は、いつの間にか優先順位が下がるからです。
共同作業には調整が必要です。それでも、誰かとの約束、異なる専門性、役割分担によって、一人では得られない推進力が生まれます。
相手がいるから開催できたセミナー
10月3日、私は精神科医の安田麻美先生とオンラインセミナーを開催しました。もし自分一人で開催する企画だったら、忙しさを理由に延期、あるいは中止していたかもしれません。
安田先生も予定を空け、準備してくださっていました。その存在が、「少し大変でも開催しよう」という力になりました。共同作業には、自分を不自由にするだけではなく、自分を前へ運ぶ約束があります。
内容面でも、協働の利点がありました。私はコーチングで扱える相談について、安田先生は精神科クリニックを受診する方と診療の実際についてお話ししました。専門性が異なるため内容が重ならず、視聴者へ幅広い情報を届けられました。
違いが自分の強みを映す
自分から仲間へ声をかけるだけでなく、誰かの誘いに乗り、補助的な役割を担うことにも多くの学びがあります。
私は小児科医の赤嶺陽子代表理事に声をかけていただき、医学教育と整形外科がご専門の山内かづ代先生とともに、日本リーダーシップ・ウェルビーイング医学会の理事を務めています。
学会は、医師のウェルビーイングを基盤にしたリーダーシップや、医学におけるダイバーシティを推進しています。
経験、専門、性格の異なる三人で活動すると、他の人の得意なことがよく見えます。
新しい企画を生み出す力、実務を正確に進める力については、他のお二人に学ぶことがたくさんあります。
では、自分は何を提供できるのだろう。そう考える中で、前向きさ、楽観性、柔軟性が、自分の役割として見えてきました。
比較は、勝ち負けを決めるためだけのものではありません。
他者との違いを通して、自分をどこで使えば社会へ最も貢献できるかを知ることにも使えます。
日本リーダーシップ・ウェルビーイング医学会 https://www.weleadjp.com/
任せることで 自分にしかできない仕事へ集中する
三つ目の例は、日本皮膚科学会公式YouTubeチャンネルの大学医局紹介シリーズ「Derma Land」です。私はアンバサダーとして、撮影スタッフ、学会事務局の方々と全国の大学を訪問しています。
自分一人で動画をつくるときは、場面の選択、画角、構成、ナレーション、編集まで自分で担います。
一方、このシリーズでは、それらを映像制作の専門家に任せられます。
私の役割は、医局の皆さんの話をよく聴き、教室の特徴をつかみ、最後に五・七・五の17音で表現することです。短い言葉へまとめるのは難しく、自分の創造性を精いっぱい使います。よい一句が生まれたときの達成感は大きなものです。
何でも自分でしないからこそ、自分にしかできない部分へ力を集中できます。協働とは、仕事を手放すことではなく、自分の力を最も生かせる場所へ移すことでもあります。
役割はいつも同じではない
旭川医科大学で男女共同参画を担う部門の責任者だったときは、私がアイデアを出し、スタッフが創意工夫を加えて実施してくれました。教授だったときには、教室員が働きやすい環境を整えるサポート役に回りました。
共同作業での役割は、肩書だけでは決まりません。同じ人でも、目的、仲間、時期によって、先頭に立つことも、支えることも、つなぐこともあります。
「自分は何が得意か」だけでなく、「このチームで自分は何を提供できるか」と問い直すことで、強みは実際の貢献へ変わります。
一人で行くか 皆で行くか
「早く行きたければ一人で行け。遠くへ行きたければ皆で行け」という言葉は、アフリカのことわざとして広く紹介されています。
一人で粛々と進める方が得意な人もいますし、すべてを共同作業にする必要はありません。ただ、一人では届きにくい目標、複数の専門性が必要な課題、社会へ広く届けたい活動には、協働の掛け算が力を発揮します。
人間は社会的な動物です。せっかくなら、人と取り組むことで得られる推進力、自己理解、学び、達成感を、無理のない範囲で味わってみてもよいのではないでしょうか。
共同作業を始める三つの問い
1. 一人では先延ばしにしているけれど、誰かとなら進められそうなことは何ですか。
2. これまでの共同作業で、周囲から感謝されたあなたの役割は何ですか。
3. 今週、誰に、どんな小さな共同作業を提案しますか。
最初から大きなプロジェクトを始める必要はありません。30分だけ一緒に考える、互いの原稿を読み合う、得意な作業を一つずつ担当する。そんな小さな協働から、自分一人では見えなかった強みが見つかります。
臨床40年、教授10年の経験とコーチングの視点から、忙しい医療者が自分の軸と強みを見つめ直すメッセージを週3回お届けしています。



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